電波通信

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多様体の話に出てくる極限集合

いわゆる志賀多様体を読んでいた時の話。この文章に出てくる用語はあまり一般的なものではないので注意してください。

まずは極限集合の定義を見て欲しいです。いわゆる志賀多様体にもある定義です。

 

定義

多様体Mの中の点列{x_n}が「集積点を持たないとき」x_n\to \inftyとかく。このとき多様体の間の写像f:M\to Nについてfの極限集合を

L(f)=\{y\mid \exists\{x_n\} s.t.\ x_n\rightarrow \infty\ f(x_n)\to y\}

と定義する。

 

わざわざ「」で囲んだのだが、この「集積点を持たない」という文言が問題で、点列に対して「集積点」というと、二通りの解釈が出来ます。

一つ目の解釈は、「点列として」の集積点・・・(1)

二つ目は「集合として」の集積点・・・(2)

この二つに解釈することが出来ます。結果から言うと先の定義の中の「集積点」は「点列としての集積点」ということだったのですがその理由を解説していきます。

 

まずは(1)を厳密に定義しましょう。

 

定義

aが点列{x_n}の「点列としても集積点」であるとはaに収束する{x_n}の部分列が存在することを言う。

 

さてこの定義の下で、(1)と(2)には明確な違いが出てきます。例えばx_n=(-1)^nと定義すると、この点列を集合として見ると孤立点しかない(というか二点集合になる)ので「集合としての集積点」を持ちません。しかし、偶数だけの番号を取ればその部分列は1に収束するし、奇数版だけ取れば、その部分列は-1に収束します。つまりこの点列は1-1が「点列としての集積点」となります。

 

さて、いわゆる志賀多様体では以下のことが証明抜きで述べられています。

補助定理

L(f)N閉集合である。

 

ここでL(f)の定義にある「集積点」を(2)の意味で解釈するとL(f)閉集合にならない場合があるので志賀多様体では(1)の意味で「集積点」と言っていることが分かります。以下その例を紹介します。

f:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R};\ x\mapsto x^2

がそういう例になっています。

y\gt 0についてx_n=(-1)^n\sqrt{y}と置けば{x_n}は(2)の意味で集積点を持ちませんし、f(x_n)=yとなります。そしてこれを使ってまぁいろいろ考えることにより

L(f)=(0,\infty)

となることが分かりそしてこれは\mathbb{R}閉集合ではありません。

ちなみに(1)の意味で解釈すれば普通の多様体においてL(f)閉集合であることが示せます。

よって志賀多様体では(1)の意味で「集積点」を用いていることが分かります。

 

追記

常識的に考えて、点列に対して集積点と言ったら(1)の意味で解釈するのが普通です。(可算集合ではなくわざわざ点列って言ってるわけだし)