リーマン体積確定集合と太ったカントール集合
ツイッターで見かけた話
ユークリッド空間の有界集合がリーマンの意味で体積確定とはその特性関数がリーマン可積分であることを言いますが、コンパクト集合がリーマンの意味で体積確定かどうかという疑問をツイッターで見かけました。今回はこの話です。
一般にこれは偽です。以下反例の解説をします。
まず次の定理があります。
定理1
は同値である。
これを踏まえると、有界集合が体積確定であるための条件が次のように言い換えられます。
系2
有界集合Aが体積確定であることと、Aの境界集合Bdry(A)がルベーグの意味で零集合なのは同値である。
ところで次のように太ったカントール集合と呼ぶべきものが存在します。
Smith–Volterra–Cantor set - Wikipedia, the free encyclopedia
これは実直線状の部分集合で、カントール集合と同相だが、一次元ルベーグ測度が正である集合です。もちろんコンパクト集合です。
この太ったカントール集合Sは自分自身と境界Bdry(S)が一致します。つまり、S=Bdry(S)
なぜならカントール集合と同相なため、完全不連結であり、Sは開区間を含まず、つまりSの内点が存在しないからです。
以上からSについて次の二つのことが分かります
- Sはルベーグの意味で零集合ではない
- S=Bdry(S)
この二つと系2を踏まえると、この太ったカントール集合はコンパクト集合でありながら、リーマンの意味で体積確定ではないことが分かります。
もちろんSは閉集合であることからルベーグ可測となり、その測度がちゃんと存在するので、リーマン積分(リーマン測度?)とルベーグ測度の違いを示す例にもなっています。
リーマン積分は難しいので、ルベーグ測度論をパパっと学習したいですね。
参考文献
杉浦光夫、解析入門I、第29版、東京大学出版会、pp266(定理1の証明がある。)
[付記2016/11/24]
単位閉区間と同相でかつ、二次元ルベーグ測度が正となる平面の部分集合が存在します。
そのような集合はOsgood Curve と呼ばれています。
この曲線を使ってぐるっとすれば、ジョルダンの閉曲線定理などを使って、開集合だが(境界集合が正の測度をもつので)リーマンの意味で可積でない平面の部分集合が作れます。