電波通信

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基本的な0次元距離空間の特徴づけの話

PDFはないです。お話だけです。

 「空間の位相的な特徴づけ」というものがあります。位相的な情報だけで特定の空間を特徴づけようということです。

 

例えば簡単な例だと任意の点が孤立点(その点が開集合ということ)である空間は離散距離空間です。

 

位相的な特徴づけがよく知られている空間がいろいろあるのですが、この記事ではそれなりに有名なやつをつらつらと紹介していこうと思います。

 

カントール集合

位相的な特徴づけがよく知られているのがこのカントール集合でしょう。

以下ではカントール集合をCで書きます。

定理1:完全(孤立点が存在しないということ)で完全不連結なコンパクト距離空間はCに同相である。

また、カントール集合から一点を取り除いた空間も上の定理1を用いて特徴づけが出来ます。

以下ではカントール集合から一点を取り除いた空間をLで書きます。

定理2:ノンコンパクトで完全、かつ完全不連結でσコンパクトな局所コンパクト距離空間はLと同相である。

この定理2の仮定を充たす空間を一点コンパクト化して定理1を用いれば簡単に証明できます。

さて上の二つの定理を合わせて次のように統合できます。

定理3:完全、かつ完全不連結な第二可算局所コンパクトハウスドルフ空間はC、もしくはLに同相である。

これを用いるとCのクロープン集合について次が分かります。

系4:Cの非空なクロープン集合はC、もしくはLに同相である。どちらに同相であるかは、コンパクトかノンコンパクトかに応じて変わる。

この定理は

L.E.J. Brouwer, On the structure of perfect sets of points, in: KNAW, Proceedings, 12, 1909-1910, Amsterdam, 1910, pp785-794

により発表されたようです。証明が載っている本としてはWillard著作のGeneral topologyや、北田韶彦著作の「位相空間とその応用」にあります。

 

有理数

以下では有理数全体をQで書きます。もちろん順序による標準的な位相が入っているとします。

定理5:集合としての濃度が可算で完全(孤立点がないということ)な距離空間はQと同相ある。

この定理の系としてQ^n(nは自然数)がQと同相であることが分かります。

この定理は

W.Sierpiński, Sur une propriété topologique des ensembles dénombrables denses en soi, 1920, Fund.Math.1, pp11-16
で発表されたようです。Fund.Math.の創刊号ですね。
この定理の証明が載っている本は知りませんが、ネット上になんかあるんじゃないかな
0次元空間ってカントール集合に埋め込めるんですが、可算空間はカントール集合の”端点”を含まないように埋め込むことが出来て、すると上の仮定を充たす空間はカントール集合の順序で見ると自己稠密な最大値最小値を持たない集合になり、しかも自己稠密性から順序位相と相対位相が一致し、そして自己稠密な最大値最小値を持たない可算な順序集合は有理数と順序同型になるので~~~みたいな感じの証明だった気がします。
 

無理数

以下では無理数全体をPで書きます。もちろん順序による標準的な位相が入っているとします。

定理6:0次元(クロープンな開基が存在するということ)でかつNowhere Compact(任意のコンパクト集合が内点を持たないということ)な可分完備距離空間はPと同相

 この定理からPとN^Nが同相であることが分かります。(Pが完備な距離をadmitすることは、Rという完備距離空間のGδ集合になってることからわかります。)

ちなみにPとN^Nの間の同相写像として、連分数展開というものが有名です。

更にP^NがPと同相であることもわかります。

この定理は

P.Alexandroff and P.Urysohn, Über nulldimensionale Punktmengen, Mathematische Annalen, Vol 98, 1928, pp89-106

により発表されたようです。ドイツ語なんでぼかぁ読めません。調べてみるとオープンアクセスのようです。証明が載ってる本としては

A.S.Kechris著のClassical Descriptive set theory があります。

 

結びの言葉

 別に0次元空間はこれだけではないのですが基本的な空間の特徴づけを紹介しました。

原論分をみて分かる通り、これらはすべて位相空間論の黎明期に判明しています。このような結果があったからこそ位相空間論の重要性が認識されたのかもしれません。

それとあと、もしかしたら電波通信のセカンドシーズンでPDFでちゃんと紹介するかもしれませんね。