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電波通信

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オイラーの公式と級数の絶対収束性

雑談

$$\newcommand{\cc}{\mathbb{C}} \newcommand{\mgn}{\infty}\newcommand{\dpst}{\displaystyle}\newcommand{\ii}{\sqrt{-1}}$$

オイラーの公式の証明と絶対収束性についての意見です。MathJax?とかいうやつを使いました。MathJaxよく分かってません。PDFは無いです。常体と敬体が混じってます。悪しからず。

 

 この記事ではテイラー展開によるオイラーの公式の証明では絶対収束性を使ってないと言うことを説明する。級数が絶対収束するとは各項の絶対値をとった級数も収束することであったことを思い出そう。

 

[事実]

任意の実数$x$について

\[e^{x}=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^n}{n!}\]

\[\cos x=\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^{n}\frac{x^{2n}}{(2n)!}\]

\[\sin x=\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n\frac{x^{2n+1}}{(2n+1)!}\]

が成り立つ。

 

上の級数を参考にして複素数に対する指数関数、三角関数を以下のように定義する。天下り的だと思うが、たった今からはこの級数が指数関数と三角関数の定義なのである。*1

 

[定義]

$z\in \mathbb{C}$に対して

\[e^{z}=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{z^n}{n!}\]

\[\cos z=\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^{n}\frac{z^{2n}}{(2n)!}\]

\[\sin z=\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^n\frac{z^{2n+1}}{(2n+1)!}\]

と定義する。

任意の$z\in \mathbb{C}$について上の$e^z,\cos z,\sin z$が有限の複素数に収束することはよく知られた事実である。

 

[定理][オイラーの公式]

\[e^{\sqrt{-1}z}=\cos z + \sqrt{-1}\sin z\]

 

[証明?][よく見る証明]*2

 

\[e^{z}=\sum_{n=0}^{\mgn}\frac{z^n}{n!}=\frac{(\ii z)^0}{0!}+\frac{(\ii z)^1}{1!}+\frac{(\ii z)^2}{2!}+\frac{(\ii z)^3}{3!}+\cdots\]

\[=\left(\frac{(\ii z)^0}{0!}+(-1)^1\frac{z^2}{2!}+\cdots\right)+\ii\left(\frac{z}{1!}+(-1)^1\frac{z}{3!}+\cdots\right)\]

\[=\cos z+ \ii \sin z\]

 

これがよく見るオイラーの公式の証明であり、この証明の

\[\frac{(\ii z)^0}{0!}+\frac{(\ii z)^1}{1!}+\frac{(\ii z)^2}{2!}+\frac{(\ii z)^3}{3!}+\cdots\]

\[=\left(\frac{(\ii z)^0}{0!}+(-1)^1\frac{z^2}{2!}+\cdots\right)+\ii\left(\frac{z}{1!}+(-1)^1\frac{z}{3!}+\cdots\right)\]

の部分で級数の絶対収束性を用いてるとよく言われている。しかし、この

\[\frac{(\ii z)^0}{0!}+\frac{(\ii z)^1}{1!}+\frac{(\ii z)^2}{2!}+\frac{(\ii z)^3}{3!}+\cdots\]

\[=\left(\frac{(\ii z)^0}{0!}+(-1)^1\frac{z^2}{2!}+\cdots\right)+\ii\left(\frac{z}{1!}+(-1)^1\frac{z}{3!}+\cdots\right)\]

という等式は一体どういう意味なのだろうか。さも当たり前のように$=$を結んでいるが、全く理由が説明されておらず意味不明である。おそらく

\[\sum_{n=0}^{\mgn}\frac{z^n}{n!}=\left(\sum_{n=0}^{\mgn}(-1)^{n}\frac{z^{2n}}{(2n)!}\right)+\ii\left(\sum_{n=0}^{\mgn}(-1)^n\frac{z^{2n+1}}{(2n+1)!}\right)\]

という意味であるのだろうが、まさしくこの等式こそが示されるべきオイラーの公式であり、この部分の説明がない上の証明は意味のない文字の列と成り果ててしまう。この部分がどう解釈されるかは人によるかも知れないが、取り敢えず私なりに厳密に以下で示してみた。

 

[証明]

まず

\[E_k(z)=\sum_{n=0}^{k}\frac{z^n}{n!}\]

\[C_k(z)=\sum_{n=0}^{k}(-1)^{n}\frac{z^{2n}}{(2n)!}\]

\[S_k(z)=\sum_{n=0}^{k}(-1)^n\frac{z^{2n+1}}{(2n+1)!}\]

と定義する。明らかに$z\in \cc$を固定すると$k\to \mgn $のとき

\[E_k(z)\to e^z\]

\[C_k(z)\to \cos z\]

\[S_k(z)\to \sin z\]

となる。ところで

\[(\ii)^0=1\]

\[(\ii)^1=\ii \]

\[(\ii)^2=-1 \]

\[(\ii)^3=-\ii\]

から

\[E_{2k+1}(\sqrt{-1}z)=C_k(z)+\ii S_k(z)\]

となる。(面倒くさいので各自確かめてください。有限和なので和を2つに分けても無問題)この時$k\to \mgn$とすれば

 

\[e^{\sqrt{-1}z}=\cos z + \sqrt{-1}\sin z\]

が得られる。[証明終わり]

 

見ての通り絶対収束性などはこの証明には用いてないのだ!(ナンテコッタ!)

むしろ絶対収束性などという難しい言葉を使わない分高校生にも分かる証明になっていると思う。

上の証明で言ってるのは絶対収束性を証明には用いてないと言うことであり、$E_k,C_k,S_k$やらはもちろん絶対収束する。

 

[注意]

上の証明で収束する複素数列$\{a_n\},\ \{b_n\}$と複素数$\alpha, \beta$に対して

\[\lim_{n\to \mgn}(\alpha a_n+\beta b_n)=\alpha\lim a_n+\beta \lim_{n\to \mgn}b_n\]が成り立つことと、複素数$a$に収束する複素数列$\{a_n\}$の部分列は$a$に収束することを使っている。つまり

\[\lim_{k\to \mgn}E_k(z)=\lim_{k\to \mgn}E_{2k+1}(z)\]

というところでこれを使っている。これらの性質は一般の複素数列に対する性質であってもちろん絶対収束性などは関係ない。

 

[なぜこうなったのか]

おそらく絶対収束する級数は和の順序を取り替えても同じ値に収束する*3のだが、これと、無限和を2つに分ける操作を取り違えてるものと思われる。級数の和を2つに分ける操作と絶対収束性とはまた別の議論である。

このことを例を出して説明する。次の条件収束級数を利用する。

\[1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\cdots\]

\[=\sum_{n=1}^{\mgn}\frac{(-1)^{n+1}}{n}\]

\[=\log 2\]

この$\log 2$という値は重要ではなく、ただ条件収束する級数の例をひとつ使いたかっただけである。さて

\[a_{2n-1}=a_{2n}=\frac{(-1)^{n+1}}{2n}\]とする。このとき上の級数から

\[\sum_{n=1}^{\mgn}a_n\]

\[=\frac{1}{2}+\frac{1}{2}-\frac{1}{4}-\frac{1}{4}+\frac{1}{6}+\frac{1}{6}-\cdots\]

\[=\log 2\]

と条件収束し、

\[\sum_{n=1}^{\mgn}a_{2n-1}=\sum_{n=1}^{\mgn}a_{2n}\]

\[=\frac{1}{2}-\frac{1}{4}+\frac{1}{6}-\cdots\]

\[=\frac{1}{2}\left(1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\cdots\right)\]

\[=\frac{1}{2}\log 2\]

である。つまり$\{a_{n}\}_{n\in \mathbb{N}}$の級数は条件収束する(絶対収束しない)が、

\[\sum_{n=1}^{\mgn}a_{n}=\sum_{n=1}^{\mgn}a_{2n-1}+\sum_{n=1}^{\mgn}a_{2n}\]

と2つの無限和に分けることが出来るのである。

 

[なぜ和の順番と無限和の分割を間違えたのか]

おそらくちょっと似ていて、そんなに使われない定理だからである。

というかそもそもオイラーの公式の証明をちゃんと細かくしたことがない人が間違えるのであると思う。誰がはじめにこの証明を書いたか知らないが、鵜呑みにしているものと思われる。まぁ証明って面倒くさいからね。

そもそもこのオイラーの公式のというものは世間で言われてるようなモノスゴイ定理ではないのである。もちろん複素数を扱う上で基礎となるので大事なのは大事なのだが、普通の数学書などではそんなに囃し立てられて陳述されるものではないのである。

例えば私が在籍する某大学の数学科の2,3年生での複素解析の講義では

$z=x+\ii y,\ x,y\in \mathbb{R}$として$e^z$を

\[e^z=e^x (\cos y + \ii\sin y)\]

と定義された。感動もへったくれもない。*4

 

大体記事は終わりですが、もしかしたら絶対収束性をクリティカルに使う証明もあるかもしれません。悪しからず。 

 

[結論]

定理がちゃんと適用できるかちゃんと確かめましょう。

 

そいえばなんか終物語にもオイラーの等式が出てきてた気がする。

*1:正則関数の剛性から、実直線を含む複素平面の領域にこれらの関数を正則関数として拡張するには、"この方法しか無い。"つまり他の方法で正則関数として拡張しようとも実直線でああいう風にテイラー展開される限り、テイラー展開で定義した値と至るところ一致する。

*2:Wikipediaオイラーの公式のページにも同様のことが書かれているし、ツイッターでもおそらくこの証明の事を指すであろうツイートをしているbotも見かける。グーグル先生で検索するとこの説明を採用しているホームページもちらほら見かける。

*3:対照的に条件収束する級数は和の順番を入れ替えることで任意の実数に収束させることも、正の無限大、又は負の無限大に発散させる事も出来る:リーマンの級数定理

*4:ちなみにこの定義を元にするとオイラーの等式と呼ばれる等式\[e^{\ii\pi}+1=0\]が自明な等式になる。これを美しいと言う前に結果だけではなく過程も見て欲しいです。

複素変数の指数関数を知る前にこの等式を見たとしよう。$e^{\ii\pi}=-1$と定義されてるかも知れない!!!